質屋を開業したいなら、質屋営業法の許可を取得する必要があります。
「質屋営業法の内容を知りたい!」「許可をとらなかったらどうなるの?」と気になっていませんか。
この記事では、これから質屋を開業したい方に向けて質屋営業法について解説していきます。
具体的な内容から罰則、質屋と古物商の違いまで解説していきますので、最後までご覧ください。
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質屋について解説
質屋を開業するためには、まずは質屋のことを知る必要があります。
- 質屋の定義
- 質屋営業法
こちらの2つの項目に分けて、ここでは詳しく解説していきます。
質屋の定義
質屋営業法に記載している、質屋の定義は以下の通りです。
第一条 この法律において「質屋営業」とは、物品(有価証券を含む。第二十二条を除き、以下同じ。)を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業をいう。
2 この法律において「質屋」とは、質屋営業を営む者で第二条第一項の規定による許可を受けたものをいう。
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
質屋とは物品を担保としてお金を貸し付ける事業者です。
期限までに金銭を返済できない場合は、担保とした物品をもって弁済に充てることができます。
また、質屋を開業するには質屋営業許可の取得が必要です。
質屋営業法
質屋営業法とは、昭和25年に質屋を営業するにあたっての規則を定めるために制定された法律です。
趣旨については、以下の通りです。
本法の趣旨とするところ は、質物の取扱を公正明朗にし、ぞう物が質屋に流れることを阻止して盗犯の防止及び検 挙に努め、もって国民の財産を保護しようとするものである
引用元:https://www.pref.okayama.jp/
制定された理由としては、ぞう物や盗品の流出を防ぐために定めた法律です。
質屋を営むためには、法律を遵守する人物のみとなっており、判断として許可を得る必要があります。
質屋営業法に定められた許可は?
質屋営業法の許可については、以下のように記載されています。
第二条 質屋になろうとする者は、内閣府令で定める手続により、営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
2 前項の場合において、質屋になろうとする者は、自ら管理しないで営業所を設けるときは、その営業所の管理者を定めなければならない。
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
質屋を開業するには、都道府県公安委員会からの許可を取得する必要があります。
申請については、各都道府県の警察署にて可能です。
また、質屋の運営を自ら管理しない場合は、別に管理者を定める必要があります。
許可には条件が必要で、必ず許可がおりるわけではありません。
質屋営業ができない人
では、許可がおりない人とはどんな方を指すのかを解説していきます。
質屋営業許可をうけれない人は以下の通りです。
一 禁錮以上の刑に処せられその執行を終わり、又は執行を受けることのなくなつた後、三年を経過しない者
二 許可の申請前三年以内に、第五条の規定に違反して罰金の刑に処せられた者又は他の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられその情状が質屋として不適当な者
三 住居の定まらない者
四 心身の故障により質屋の業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
五 営業について成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が質屋の相続人であつて、その法定代理人が前各号、第七号及び第十号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
六 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
七 第二十五条第一項の規定により許可を取り消され、取消しの日から三年を経過していない者
八 同居の親族のうちに前号に該当する者又は営業の停止を受けている者のある者
九 次のいずれかに該当する管理者を置く者
イ 第一号から第三号まで又は第五号から第七号までのいずれかに該当する者
ロ 心身の故障により管理者の業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
十 法人である場合においては、その業務を行う役員のうちに第一号から第七号までのいずれかに該当する者がある者
十一 第七条第一項の規定により、公安委員会が質物の保管設備について基準を定めた場合においては、その基準に適合する質物の保管設備を有しない者
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
こちらの内容を確認する限り、よっぽどのことがない限り許可がおりない状況ではないといえます。
とはいえ、破産して復権を得ない方や禁固刑以上の刑に処せられた3年以内は、許可はおりないため注意しましょう。
保管設備が必要
許可を得る条件として、公安委員会が認める保管設備が必要です。
公安委員会が認める条件としては、以下の内容が記載されています。
- 公安委員会が認める耐火性能を有する防火構造
- 鉄製扉等盗難防止に有効な設備及び堅ろうな施錠設備
- 防湿上の措置を講じ、ねずみの侵入を防止するための設備
- 保管設備の補修、建替え等のための仮保管設備
許可を得るポイントとして一番大変なのは、保管設備を準備することです。
以上の項目を確認して、各都道府県へ申請するようにしましょう。
質屋の金利は何%?
質屋は質屋営業法に基づいて金利を定めています。
質屋営業法に記載されている金利情報は以下の通りです。
質屋に対する出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第二項の規定の適用については、同項中「二十パーセント」とあるのは、「百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)」
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
質屋の金利は年率108%で、月利で9%もの利息をつけることができます。
消費者金融の年率と比較すると約10倍です。
とはいえ、消費者金融と違う点や注意点もあります。詳細は以下の通りです。
- 日割計算はできない
- 悪徳業者に注意
ここでは、上記2項目について解説していきます。
日割計算はできない
質屋の金利は日割計算ではなく、月割計算です。
もし1週間で返済したとしても、1ヶ月分の利息を支払う必要があります。
仮に10万円を借りた場合の月利は以下の通りです。
月数 | 金額(月利9%) |
1ヶ月 | 9,000円 |
2ヶ月 | 18,000円 |
3ヶ月 | 22,562円 |
質屋では返済が滞ると利息が膨れ上がっていくシステムのため、利用する方は早めに返済をおすすめします。
悪徳業者に注意
質屋の中には悪徳業者もいます。
法令上の金利上限は109.5%(月利9%)までとなっていますが、それ以上の金利を上げてくる業者は要注意です。
質屋の金利が高いといわれたとしても、上限なく利息がつけられるわけではありません。
質屋を経営する中で全国質屋組合連合会に加入している店舗もあります。
全国質屋組合連合会に加盟している店舗は金利を適正にしているところが多く、利用するなら判断材料におすすめです。
質屋営業法に定めれている利用できる年齢
質屋営業法に定められている利用できる年齢は18歳以上です。
18歳とはいえ、高校生の場合は利用できません。
もし、相手が未成年とわかり取引をした場合、営業停止もしくは取り消しの対象になるため気をつけましょう。
また初めて質屋を利用する場合は、身分証明書などの公的な証明書が必要です。
質屋と古物商の違いは?
質屋と古物商の違いをまとめた表は以下の通りです。
項目 | 商品 | 金利 | 貸し付け | 許可 |
質屋 | 担保 | あり | あり | 必要 |
古物商 | 買取 | なし | なし | 必要 |
こちらが、質屋と古物商を比較した表です。
表をもとに、質屋と古物商について解説していきます。
質屋
質屋とは、質屋営業法の内容に沿って営業している店舗のことです。
業務内容としては、金銭の貸し付けをする代わりに担保として物を預かります。
金銭が返済されない場合は、預かった商品が「質流れ」となり、返済にあたるシステムです。
質流れとなる期間は3ヶ月、商品を返却してもらう場合は貸し付けた金額と金利を支払ってもらいます。
金利は1ヶ月ごとに発生し、日割計算ではなく月割で計算されるため、2ヶ月半で返済したい場合は金利3ヶ月分の用意が必要です。
もしも、金利分まで支払わない場合は、質流れが決定します。
古物商
古物商は、古物の買取業務及び販売業務に必要な資格です。
古物商は、商品に対して金銭の貸し借り業務はおこないません。
顧客が持ってきたい商品を、査定して商品価値を決めて金銭を支払うシステムです。
また、買取をした商品を店頭・ネットで販売する際にも古物商の資格が必要になります。
質屋営業法についてよくある質問
ここでは、質屋営業法についての質問を、プロ鑑定士であるせきえもんが回答していきます。
よくある質問内容は以下の通りです。
- 質屋営業とは?
- 質屋営業の許可が取れない?
- 質屋営業法を破ったときの罰則は?
- 質屋の監督官庁は?
- 質屋営業とは?
- 許可証を返納するのはどんなとき?
- 質流とは?
こちらの質問内容7つに回答していきます。
質屋営業の許可が取れない?
質屋営業の許可には、基準があります。
住居の定まらない方、心身の故障により質屋の業務を適正に行うことができない方は許可がおりません。
気になる方は、最寄りの警察署に問い合わせてみましょう。
質屋営業法を破ったときの罰則は?
質屋営業法を破ったときの罰則は以下の通りです。
- 無許可営業・名義貸しをした場合、三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金
- 許可した営業所以外で、質屋営業をおこなった場合は、一年以下の懲役若しくは三万円以下の罰金
- 申請書の記載事項に変更点があった場合に届け出を怠った際は、一万円以下の罰金
- 立入検査を拒否した場合、一万円以下の罰金
- 盗品を取り扱った場合に、警察署に届出を怠った際は、拘留又は科料に処される
こちらが、質屋営業法を破った際の罰則内容となります。
質屋営業が法人だった場合は、個人だけではなく法人にも罰則を科せられます。
質屋の監督官庁は?
質屋の監督官庁は「警察庁」です。
金融庁ではないため、注意しましょう。
許可証を返納するのはどんなとき?
許可証を返納する際の場面は以下の通りです。
- 廃業するとき
- 許可証の再交付を受けた者が亡失し、又は盗み取られた許可証を回復するに至つたとき
- 許可を取り消されたとき
また、許可を受けたものが死亡した場合は、同居の親族、法定代理人又は管理者が許可証を返納する必要があります。
質流とは?
質流れとは、質屋に借りた金の返済をしないまま期限が切れた際に、担保にしていた質物の所有権が質屋に移ることをいいます。
期限が過ぎた場合は返却できないため、利用する方は必ず守るようにしましょう。
質屋営業法のまとめ
この記事では、質屋営業法について解説していきました。
質屋営業法とは、盗品などの流出を防ぐために制定された法律です。
質屋を開業したい方は、質屋営業法に沿った運営ができる人物となっており、国からの許可を得て経営をスタートできます。
もしも、質屋営業法を守らず営業した場合罰則が科せられるため、「許可を得る」「法律を守る」ようにしましょう。
許可には基準がありますが、基準さえクリアできれば誰でも申請できます。
申請については、最寄りの警察署でできますので、取得したい方は一度問い合わせるとよいでしょう。