原則として、営業所ごとに管理者の設置が必要です。
「古物営業所の管理者ってなにをするの?」「管理者になるためには、なにか資格は必要なの?」
初めて古物商許可の申請をする場合、こんなことを疑問に思うでしょう。
古物営業所の管理者のことをよく理解せずに選んでしまうと、申請が通らない可能性があります。
最悪の場合、古物営業法違反になります。
この記事では、古物営業所の管理者の仕事や、管理者になれる人となれない人について解説しています。
これから古物商許可を取る予定の方や、古物商の開業予定の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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古物営業所の管理者はどんな仕事?
管理者とは、古物の取引が問題なく行われているかを監視する責任者のことです。
また、古物の取引の中でトラブルが発生した場合、窓口として警察とやり取りすることもあります。
古物営業所の管理者に関する古物営業法の規定は、以下の通りです。
第十三条 古物商又は古物市場主は、営業所又は古物市場ごとに、当該営業所又は古物市場に係る業務を適正に実施するための責任者として、管理者一人を選任しなければならない。
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
古物営業法は、盗品の売買などの防止を主な目的としています。
そして、古物営業法によって定められた管理者は、古物が不正なものであるかを判断し、安全な取引を行うために必要な存在です。
古物商許可申請時に管理者の設置が義務付けられている
古物商許可の申請書類の記入項目の1つが、営業所ごとの管理者の氏名と住所です。
古物営業法第5条の中で、申請書類に管理者の情報を記載することが定められています。
第五条 第三条の規定による許可を受けようとする者は、その主たる営業所又は古物市場の所在地を管轄する公安委員会に、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければならない。この場合において、許可申請書には、国家公安委員会規則で定める書類を添付しなければならない。
四 第十三条第一項の管理者の氏名及び住所
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
管理者に関する情報を記載しないと、古物商許可の申請が通りません。
また、申請が通らないからといって、無許可営業をしてしまうと、罰則があるので、注意しましょう。
無許可営業の罰則は、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。
古物営業所の管理者に求められる条件はある?
古物営業所の管理者になるために必要な条件やルールは、以下の3つがあります。
- 古物営業所に常駐・常勤できる人であること
- 各営業所ごとに1名ずつ設置すること
- 特に資格は必要ないこと
それでは、1つずつ見ていきましょう。
古物営業所に常駐・常勤できること
責任者という立場である管理者は、古物営業所に常駐または常勤できる人でなければいけません。
管理者は、古物営業所に通勤できる距離に住んでいる人を選びましょう。
もし、通勤ができない人を選任した場合、管理者として認められない可能性があります。
古物営業所に通勤できる範囲に引っ越す予定がある場合などは、警察署に相談することで、認められることもあります。
上記のような場合は、事前に管轄の警察署に相談しておきましょう。
各営業所ごとに1名必要
古物営業法第13条で定められている通り、古物営業所ごとに管理者を1名ずつ設置する必要があります。
原則として、複数の営業所がある場合、1人の管理者がほかの営業所の管理者を兼任することはできません。
しかし、近接している営業所であれば、管理者を兼任することも可能です。
管理者の兼任に関して、平成7年に警察庁から発行された古物営業法の解釈基準の中で、下記のように明記されています。
複数の営業所等が近接しており、双方の営業所等を実質的に統轄管理することができ、管理者の業務を適正に行ない得る場合にあっては、同一人が当該複数の営業所等の管理者を兼任することも許容される。
引用元:https://www.npa.go.jp/
具体的には、複数の古物営業所が同じ部屋にある場合などを指します。
上記のような特殊な例を除いて、基本的には1人が複数の営業所の管理者を、兼任することはできないので注意しましょう。
特に資格は必要ない
古物営業所の管理者になるために、資格は必要ありません。
古物商として開業する前に、古物商許可を取得し、営業所に古物商許可のプレートを掲げていれば、問題なく営業できます。
また、従業員に指導と監督が可能な知識があれば、店長だけでなく、フルタイムのパートリーダーなどでも、管理者への選任が可能です。
フルタイムのパートリーダーだったとしても、未成年者は管理者になれません。
古物営業所の管理者になれない欠格事由
以下の欠格事由に1つでも当てはまる人は、古物営業所の管理者になることができません。
- 未成年者
- 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
- 犯罪歴のある者
- 暴力団員、元暴力団員、暴力的不法行為をする可能性がある者
- 住居が定まっていない者
- 古物営業法第24条の規定によって、古物営業の許可が取り消されてから5年が経過していない者
- 古物商許可が取り消しとなり、聴聞から処分確定までの間に自主的に返納してから5年が経過していない者
- 心身の故障によって、管理者の義務を適正に実施することができない者
参照:古物営業法第13条第2項
上記に該当する場合でも、対策を取れば営業所の管理者になれる可能性はあります。
たとえば、未成年者であっても、結婚している場合は成年者と同等に扱われるので、欠格事由に該当しません。
また、犯罪歴がある人は、罰金、拘留、科料のいずれかの刑罰では、基本的に欠格事由には当てはまりません。
しかし、以下の4つの犯罪の場合は、罰金のみであっても欠格事由です。
- 窃盗罪
- 背任罪
- 遺失物横領罪
- 盗品等有償譲受罪
上記の犯罪が欠格事由になるのは、古物商許可が盗品の売買の防止を目的としているためです。
営業所に常勤する管理者は知識や経験が必要?
古物営業所の管理者には、古物や営業に関する知識や経験が必要です。
管理者は、盗品の売買や不正行為が営業所で行われるのを未然に防ぎ、適切に古物の取引がされているかを監視する責任者になります。
取り扱う品目によって必要な専門知識は異なりますが、中古の自動車などを扱う場合は、不正改造や盗難車などを見抜く能力が必要です。
また、管理者は従業員の指導をする立場でもあるため、古物に対する正しい知識を持っていなくてはいけません。
申請時に、警察から古物に関する知識を持っているか確認されることもあります。
各都道府県の警察署で、古物営業に関する法令講習会などが定期的に実施されています。
古物営業所の管理者は、上記の講習に参加する義務や、参加しないからといって罰則などはありません。
しかし、公安委員会が不相当だと判断した者は、解任を勧告できるとされているので、しっかりと専門知識を身につけておきましょう。
古物商自身も管理者になれる?
古物商自身も、古物営業所の管理者になれます。
個人で古物営業を行おうとしている人や、1人で法人を立ち上げた人の中には、自分で管理者を兼務したいと考える人もいるでしょう。
上記で述べた欠格事由に当てはまらなければ、古物商自身が管理者になることは可能です。
ただし、複数の営業所がある場合は、営業所ごとに管理者を1名設置する必要があるため、ほかの人を管理者にする必要があります。
途中から、ほかの人に管理者を任せることになった場合には、14日以内に警察署に変更届出を提出してください。
もともと担当していた管理者が、別の人に交代になった場合でも、同様に変更届出を提出しましょう。
期限を守らなかった場合、10万円以下の罰金が科される可能性があります。
まとめ:古物営業所ごとに1名管理者を常駐させる必要がある
古物営業所の管理者の特徴は、以下の5つでした。
- 古物の取引が適正に行われているかを監視するための責任者のことを指す
- トラブル発生時には、警察とのやり取りの窓口になる
- 営業所ごとに管理者を1名ずつ設置する必要がある
- 営業所に常駐・常勤できる人である
- 古物商自身が兼務することもできる
また、未成年者など、古物営業法で規定された欠格事由に該当する人は、管理者になることができません。
古物営業所の管理者は、古物商として営業するために欠かせない存在です。
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